テーマ
- IgE上昇=アレルギー とは言えないってどういうこと? アレルギーの誤解
- 「アニサキス症」でもIgEは上がる!!
- 「アニサキスアレルギー」の診断が難しい理由
- アナフィラキシー発症の要因
- 食後の運動に気をつけていれば大丈夫?! アレルギーを増悪させてしまう8つのこと
- 〈完全除去〉と〈焼き魚OK〉両方あり得るのはなぜ? 私はどっち?
- アニサキスのアレルゲンにはタイプと特徴がある
- アニサキスアレルゲン混入について
- 【衝撃】アニサキスアレルギーだけどアレルギーではないかもしれません
- 食事除去を解除していくときの考え方
- アニサキス食中毒発生件数
- アニサキスのアレルゲンは何に反応しているのか?
- アニサキスアレルゲンの種類と特徴
「まとめ・文責:アニサキスアレルギー協会」
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IgE上昇=アレルギー とは言えないってどういうこと? アレルギーの誤解
「IgEが高いほどアレルギーになる可能性は高い」が…
IgEが高くても症状が出ない人もいる
(例) 大豆アレルギー IgE100でも症状がある人は30〜40%
つまり… IgEの数値だけではアレルギーの診断はできない
これについては年齢によって違いがあり、例えば牛乳で言うと…
(アニサキスアレルギーは小児にほとんど見られないため牛乳を例に)
小児のアレルギーではIgEの高さとアレルギーは結びつきやすいが年齢が高くなればなるほど(成人アレルギー)IgEの高さとアレルギーが結び付かなくなる。
また、どのアレルゲンが、どのくらいの数値だと、アレルギーの可能性が高いのか? については、アレルゲンによって違いがある。
アニサキスはIgEとアレルギーが結び付かない傾向が顕著
アニサキスIgE 100 でもアニサキスアレルギーではない可能性もあり、IgE高い≠アレルギー が結びつきにくいアレルギーである。
さらに・・・
「アニサキス症」でもIgEは上がる!!
アニサキス症になると必ずIgEは上昇する!!
アニサキスに胃や腸を齧られると、必ずアニサキスIgEが上がる。
そのため、アニサキスIgEを検査して数値が上がっているだけではアニサキス症によるものなのか、アニサキスアレルギーなのか判断ができない。
ちなみに…
・食中毒は全国で 約7,000人/年 発生 (報告数)
そのうち、原因の約40%が「アニサキス」
・アニサキス症での全身性の蕁麻疹(アレルギー症状)発症率は約3%
「アニサキスアレルギー」の診断が難しい理由
- 病院を受診してもアニサキスIgEの測定に至らないことがある
(原因不明とされたり魚介アレルギーなどの誤診も) - 摂取から症状が出るまでの間に時間がかかることがあり、その間に他の物も摂取してしまうため原因特定が困難な場合も
- 胃アニサキス症 1-24時間後に発症 90%以上
- 小腸アニサキス症 1-7日後に発症 5%以下 - 皮膚試験・負荷試験が困難 (寄生虫のため衛生・倫理上)
- 魚介を食べていなくてもIgE上昇が起こる
- 食物アレルギーがある人の約30%はアニサキスIgE陽性
- ダニアレルギーなどの交差反応による上昇
※ アニサキスのタンパク質とダニのタンパク質が同じため、ダニアレルギーIgEが高いとアニサキスアレルギーのIgEも上昇する場合あり - 水産/水族館/和食など魚に触れる従事年数が長いほど感作率が上昇傾向にある(経皮感作)
ではどのように診断に至るのか?
昭和大学病院の現状では…
- 生魚を直近に食べた
- 魚を食べた後にアレルギー症状を繰り返している
- 魚を完全除去したら症状が出ず 再開すると出る
- アナフィラキシー時IgEから1-3ヶ月後にIgEが上昇している
- その他のアレルギーを除外できるか
現在国際的なガイドラインが作られていないため、病院や医師の経験則によって診断精度が変わってくる現状がある
アナフィラキシー発症の要因
昭和大学病院において、アナフィラキシーで受診する患者(約300人/年)のうち約30%がアニサキスアレルギー。
年齢上昇とともにアニサキスアレルギーの割合は増加傾向にある。
(20-30代15%/65歳以上33%・10代は ほとんどいない)
ちなみにアニサキスアレルギーでアナフィラキシーを起こしたと診断された患者の要因は、
生魚‥約65% | 焼き魚‥約31% | 魚介出汁‥約4% |
つまり、生魚だけではなく、加熱魚や出汁でもアナフィラキシーを起こす場合がある。 また、アナフィラキシーを起こすほどのアレルゲン量を摂取していなくても、 アレルギー反応を増悪させてしまう「リスク因子」が重なることで、アナフィラキシーにまで至る場合もある。
食後の運動に気をつければ大丈夫?! アレルギー反応を増悪させてしまう8つのこと
成人アナフィラキシーの約40%においてアレルゲン摂取以外に症状が増悪する要因が関与したというデータがある。
その要因が…
※他にもあります
最近知られるようになってきた「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」。
アレルゲンとなるものの摂取後、運動による負荷がかかることで誘発されるアナフィラキシーだが、実際には 運動だけ、食後だけ、気をつければいいわけではない。
例えば…
普段は焼魚を一切れ食べても無症状や蕁麻疹程度しか出ない人が、焼き魚を食べる前後に酒を飲み、風呂に入ったなどのCofactorが重なると、アナフィラキシーになることもある。
アレルギーが起きる可能性のあるものを摂取する場合には、食事の前後 2〜3時間はCofactorを避ける
〈完全除去〉と〈焼き魚OK〉両方あり得るのはなぜ? 私はどっち?
〈完全除去〉
- 症状を起こしたことがあるものは怖い
- 目視で摂取量がわからない
- アレルゲンとなるアニサキスの分泌物の中には、熱や酸では壊れないものがあり、煮ても焼いても溶かしても壊れずアレルギーを起こす
- 魚粉(鰹出汁など)や、魚粉を餌として与えた養殖魚にもアニサキスのアレルゲンが検出されている
- 刺身を食べても大丈夫だった
- 出汁を食べられている
- 令和のアレルギー診療は「食べられるものは食べる」方針
- 冷凍魚に対しては91.3%反応しない (論文)
アニサキスのアレルゲンにはタイプと特徴がある
私たちが普段、血液検査で調べる「アニサキスIgE」は、アニサキス虫体全体(体・体液など全てをひっくるめて)に対する抗体を調べている。
アニサキスには「コンポーネント」と呼ばれる、特徴の異なるタンパク質があり、そのどれに反応しているかによって、症状やその出方が変わってくると言われている。
自分がどのAnis X に反応しているのかが検査で調べられるようになると、焼魚は大丈夫なのか、完全除去が必要なのか、などがわかるようになるが、現状はまだわからないことも多く研究が待たれるところ。 ※ アニサキスIgeが0や1でも コンポーネントAnis 4を抽出して測ると2や3の場合がある
※ アニサキスのコンポーネントは14以上あることがわかっている
アニサキスアレルゲン混入について(論文参考情報として)
- 餌の乾燥魚粉にも、魚粉を与えられた養殖魚にもAni s 4 が高頻度に検出された
- エビやカニを捌いた時にアニサキスが出てくることはまずない
- アニサキスアレルギーがあり、エビやカニに反応する場合にはAni s 2/3 に対しての感作により甲殻類に対して交差反応が起きるのではないか